TRAIN協会 第4回講演会


講題:マルチメディアのアクセシビリティ

波技術短期大学 夏目 武

 マルチメディアとその周辺の諸技術及び現在のIT革命という現象の中にある社会情勢を確認しつつ、そこに存在する人間、特に障害を持つ人々の立場からのアクセシビリティの状況を観察し、吟味する。 又 視覚に障害を持つ人の場合について、実証的に考え話し合う機会を持つ。

1. 状況確認

11. コンピュータ_システム

  コンピュータ_システム(PC) のOSの基本使命は系の規定れた出力を効率の良いシステムで保持すること、保有資源及び連結共有資源の有効利用すること及びその為のユーザーの利用しやすさの為の最適設計によるUI(User Interface)を提供することである。 また、資源とは取扱う情報のシステムへの入力と出力と保管のための諸機器類とその関連適用ソフトウェアを意味する。 加えてネットワーク網の一部として、共有可能なデータベースからの情報入手と提供を含む。  

12. GUI(Graphic User Interface)

 システムへの重要な要求事項はユーザーの利用し易さの為の最適設計によるUI(User Interface)を提供することであろう。 加えて、パーソナル_コンピュータや携帯型端末-PDAの様に一般エンドユーザーが使用者の場合のUIに関しては、誰もが容易に使える、人に易しいコンピュータ、技術支援や詳しい技術説明書や使用説明書が不要で、又、特別な訓練も予備知識も要求されることなく、すぐにでも使える、という条件が加わる。 GUIの進化はこれらの答えとして登場している。 全体の把握を直感的に行いつつ所定の階層化された奥深い個所へ到達する道具として有効となる。情報の多様化と機能の多重化とがすすむ情報環境の中で、効率と使いやすさの追求はGUIの構造的階層化を促す。 その手順の列群はアステカの絵文字表現に酷似してくる。

13. マルチ_メディア(Multi-media)

 マルチ_メディア(Multi-media)とは情報伝達の一形態と定義するとき、それらを新聞雑誌等の掲載記事等の平均的、日常的なものは以下の分類に入るであろう。  131.PCからの情報/ 132.PCの周辺機器からの情報/ 133.ネットワーク網からの情報/ 134.公共の放送等からの情報/ 135.MCS(Mobile Communication System)からの情報/ 136.カメラやラジオや市販音楽レコード類等の情報/ 136.社会システムとそれらの設備等に繰込まれている機能とサービスからの情報  形態的側面から見ると、 文字情報であり、画像情報であり、音楽情報等である。これらは何らかの形式でデジタル化されていて、PCでそのまま処理できる形態の情報である。    物理的側面から見ると、 FD, HD, DAT,MO, MD, CD-ROM, DVD, Compact flash memory, Smart media memory, Sticktype memory,etc.

14. アクセシビリティ_デザイン

 アクセシビリティ機能とは総ての人々が人種、年齢、障害等の障壁を越えた状況での使い易さと同等の機能提供とその支援サービスを平均的健常な人々と同等に享受出来るような固有の機能を備えた製品とサービスの創生と提供を意味する。  アクセシビリティ_デザインとは要求定義、開発と設計,製造・試験と据付、運用と保守、及び製品廃棄と次段階機種選定というプロダクト_ライフ_サイクル_プロセスの全工程の中で組み込まれ,評価されていくものである。これらの過程を通して、システムのGUI設等計において、総ての人々のためのアクセシビリティ_デザインを配慮すべきなのである。その時が到来していることを認識したい。

2. 社会環境の確認

21. アクセシビリティ

 昨年、2000年にIEC(国際電気技術会議機構)-電気技術関連の国際規格を制定し、管理するNGOは所信表明(Policy Statement) 「高齢者及び障害を持つ者のニーズの規格化への取りくみ」と題する文書が発行した。 これは機能障害-Disabilityに対する諸製品の操作性、サービスの適用性及び諸環境状況に関する配慮-accessibilityについての指針の表明であり、全世界の産業に向けての勧告である。 製品やサービスにおけるアクセシビリティは最初から設計や計画書におり込みなさいという考え方Accessibility Designとその方向付けであります。 同様に、ユニバーサル_デザイン(Universal Design)という言葉も使われている。  この指針に基づき工業規格の見直しと概念の導入が進めば、これからの製品やサービス等のアクセシビリティ機能の向上が期待されることになる。

2.2 2000年沖縄サミット宣言より キーワードを拾う。

第10項  ITは、世界中の人々に力を与え、利益をもたらし、そして人々を結び付ける。それは、また、世界の市民が自らを表現し、お互いを知ると共に敬意を払うことを可能にする。更に、経済を一層拡大し、各国の公共の福祉を増大し、社会的一体性を増進し、もって民主主義の育成を可能にする、大きな潜在性を有している。したがってITが提供する機会へのアクセスは、すべての人に対して開かれていなければならない。 第11項 ITへのアクセスが現在限られている人々にもそれらの利益が広がることを確保する。

22. IT予算化

-毎日新聞等の記事( 2000-10-19)から 政府は19日午前、経済対策閣僚会議と財政首脳会議の合同会議を開き事業規模11兆円程度の新経済対策「日本新生のための新発展政策」を決めた。「景気の自立的回復軌道の確立と未来型社会への出発」を掲げ3年連続の大型経済対策を実施する。目玉のIT(情報技術)推進策には、IT国家戦略(E-ジャパン構想)の年内策定やインターネット習得の為の700万人講習会などで総額1兆円を盛り込んだ。....... 同様に 毎日新聞等の記事( 2000-11-03)から「IT(情報技術)立国」に向けて、政府のIT戦略会議(議長・出井伸之ソニー会長)が検討しているIT国家基本戦略 「e-Japan戦略」(仮称)の草案全文が2日、明らかになった。  必要な制度改革や施策を当面の5年間に緊急・集中的に実行することが必要と明記。具体的には@超高速ネットワークインフラ(社会資本)の整備、A電子商取引ルールの整備、B電子政府の実現、C人材育成の強化の4分野に集中的に取り組むこととし、数値目標も盛り込んだ。インフラ整備について、目標は、5年以内に世界最高水準の超高速インターネット網(毎秒 30-100メガビット)の整備を促進、国民が低料金で利用できるようにする。        ともかく 世界は動いている。

23. 企業等活動

  例えば、マイクロソフト社はMSAA(Microsoft Active Ac  Accessibility),IBMはSNS(Special Needs Systems)等 、大手企業はすでに自社製品のアクセシビリティ_デザインとサ  ービスに対応している。 又W3C (World Wide Web Consortium) の一作業部会でも、画像情報の代替表現の   勧告、発信される文字情報の音声化への諸課題と取り組   み、応用開発に対する数々の要求と勧告が行なわれております。e-ビジネス、電子商取引、e-コマースとも云いあらゆる商取引をインターネット通信網を活用し て行うもので、ネット_バンクが営業を開始したほか、電子マネーとか、電子決済とかの新たな試みが始まっている。電子政府構想もe-Japan重点計画の一つとして1兆3千億円の規模の予算でスタートしている。 他の分野での電子化、e-ビジネスへの転換の大きな機動力となるであろう。   IT構想で示しているように、高速通信網の整備と低料金の回線使用料金体系は必須のことであり,アメリカの進展の大きな要因となっていることは周知のことである。

3. 生活環境の確認

  以下に、白書等から課題の対象となる基本数を示し,確認する。

31. 障害を持つ者−身体障害者

障害者白書 (平成12年)より 平成8年データによると 障害を持つ日とは総計2,933千人、そのうち 視覚に障害を持つ人の数は305k人、10.4% である。      又 高齢化社会という老人の数は厚生白書 (平成12年)より 平成8年データから 65才以上の老人  18,261千人 - 総人口 125,570千人 14.5%、  障害を持つ人々の総数は老齢化に伴う機能障害の発生を含めた障害を持つ人々を対象として考慮すると対象者は     21,194千人 (16.95%) いることを認識したい.  この先20年は5年毎の増加は凡そ2%程度が続くことが予測されている。  アクセシビリティ_デザインの対象となるべき基本数となるであろう。    

32. その他

 パソコン教室がIT推進構想の一つに700万人の人々へのパソコン教室での教育訓練プログラムがあり、各地で進められている。   インターネット人口の増加、いくつもの課題や懸案事項と条件等が存在するにもかかわらず、インターネット人口は確実に増加している。 以下は情報白書 2000年より インターネット サービス プロバイダーは1999年で 4349(予測) で インターネット使用人口は アメリカの7,650万人に次ぐ 975万人である   

4. これからの方向と課題

 PCのGUI(Graphic User Interface)はますますコンピュータ設計の中心となって発展していきている。アクセシビリティの追求は当然この方向に進みます。 階層化されたGUIは機能として複雑化を促進します。 操作の効率を追及する方向としては否定できない正しい道である。 イメージ、アニメーション、イメージ_マップ、ハイパー_テキストの連結、文書のページと章立ての構成、グラフや作表、アップレットとスクリプトロコマンド、プラグ_イン、ウインドウのフレーム構成、メニューとテーブル等々限りなく整備を必要とする課題が発生している。 これに伴い、技術の進展に付随するGUIの音声化の開発を難しくする。 加えてこれは部分を読むが全体を読まないという決定的な欠陥を提示する。 このことは現在も大きな課題です。健常者は一つの対象を部分として認識しますがその時点で無意識の中に全体の状況を把握し,その認識の精度を補償し、確度を上げ合わせて,間違いの補正を行っている。 非常に重要な機能であることは周知の事実である。 この問題は今のに所、全く解けていない。階層化されたそれぞれの部分を読みあげることのみに関心が集まっていて、認識の効率と精度の問題にまで至っていないのが現状である。より高度の論理と認識とを必要とする状況では不可欠な機能と考える。  先に示したアクセシビリティ_デザインが産業界に浸透するまでは、依然と新しい製品とその機能の享受に関する機会均等は保たれないことになる。

5. Seeing is believing.

51. 見えないこと

52. 全盲の学生 中村真樹君の紹介