去る平成15年11月24日、 社団法人私立大学情報教育協会主催による 平成15年度私立大学情報教育協会総会が開かれました。
その会において、「臨床医学自己学習のためのマルチメディアシミュレーションシステムの開発」 の功績を称え、椎橋副委員長が、私立大学情報教育協会賞を受賞されました。 おめでとうございます。
椎橋副委員長の研究内容は、平成15年度医学教育情報技術活用研究集会にて 特別報告講演として紹介されています。
タイトル: | 臨床医学自己学習のためのマルチメディアシミュレーションシステムの開発 |
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発表者 : | 椎橋実智男、鈴木美穂(埼玉医科大学医学情報施設)、 森田孝夫、 大野良三(埼玉医科大学医学教育学室) |
私たちは1995年頃から、PCを用いたマルチメディア教材がより良い医学教育を実現するためのひとつの方法であると考え、教材の開発と研究に取り組んで来ました。
当初は、Windows系のPCはまだ画像、音、動画のどれをとっても不十 分で、Machintosh系のPCを使っていました。米国でも状況はほぼ同 じで、現地調査に行った大学でも Macintoshが中心でした(現在は Windows系が中心です)。その後も、米国の大学の実情調査や国際的 なマルチメディア医学教材の研究会への参加を通じて教材開発の方 向性を探ってきました。
今回発表した教材は、医学部の臨床実習において必ずしも遭遇でき るとは限らない、しかし臨床医として経験しておくべき症例(病気) について学習することを目的としています。無論、実際の患者さん から学べれば一番良いのですが、臨床実習という限られた期間に都 合よく患者さんが来院するとは限りません。また、高価なモデル型 のシミュレーションシステムもすばらしいのですが、一つの大学で しかも学生数に応じた機器を設備することは困難です。私たちの開 発した教材は、PCのみを用いることで、どこでも、安価に学習する ことが可能です。また、シミュレーションであるがゆえに、実際の 患者さんを目の前にしては話しにくい点についても学生間あるいは 教員と学生間で十分な討論ができるという利点もあります。
現時点での大きな問題点のひとつは、医学教材のための画像や心音 など「素材」集めにあります。心電図ひとつをとっても患者さんの ものであり、医学教育に用いることを承諾していただかない限り勝 手に使うことはできません。このことは国内のみならず、米国でも 「足かせ」になっています。国内では、いくつかの学会が活動を始 めているところです。この成否が、大学による無料配布可能なマル チメディア医学教材の今後の発展の大きな鍵を握っていると言える でしょう。